2011/12/25

Merry Christmas.


私は自分が人に求めすぎていることを知っている。
モノではない。
お金でもない。
ただ気持ちが欲しい。
極端な感情しか愛せない私は中庸で半端な愛情はいらない。
「愛している」
「必要だ」
そう言われないと不安で仕方がない。
そしてその不安の穴はぽっかりと空いたまま今日もまた誰かを傷つけた。
あなたに愛されたいとはっきり言うことが怖いように、
あなたもわたしを愛しているということを恐れている。
強いて言ってもらった言葉の虚しさ。
馬鹿らしいことを知っているのに何度も繰り返して傷を増やす。
どうしてこんなに器用にできないのか。
どうして想いやれないのか。
このまま想いの通じぬまま死んでしまう予感に涙が止まらない。







私が私のわがままを言うだけの関係は嫌だ。
早く帰ってきて欲しいだの、早く会いたいだのの言葉がなければ必要とされてないとしかかんがえられない。
私の性格は1か0なんだよ。
好きか嫌いか。
必要か必要じゃないか。
それだけなんだよ。
何も言わないことは嫌いと同じなの。
苦手なんて知らない。
何も言えないようにしか思えない。
そういう消極的な姿が嫌い。




2011/12/21

強引に



強引に押し付けた薄い皮膚はエナメル質の白く並んだもので傷つけられて、そこは裂けて、赤く不味いものが流れ出た。

じくじくとそこが痛む。

加害者は今さっき部屋を出ていった。

普通ならその腕を取るなり、後を追うなり、背中を見詰めるなりなんでも出来た筈だ。

けれど僕は口に広がった鉄の味をじっくり確かめることしか出来なかった。

羞恥と嫌悪と後悔を隠すにはそれが一番似合う方法だった。




2011/12/15

写真の思い出




彼女はいつも私を見つけると名前を呼んでこちらに駆けてくる。
私はそれを当り前だと思っていた。



高校も三年目に入り、いよいよ勉強しか許されない状況に追い込まれた頃私は彼女に出会った。
今までも見たことがなかった訳じゃない。
でも気にかけることがなかった。
ただそれだけのこと。
気づけば私の前が彼女の席で、気づけば話すようになって、
学校に行けば毎日会えるし、彼女は私にきらきらと笑いかけてくれた。
そんな生活に可もなく不可もなくと私は自分勝手な思い込みを与えた。
幸せなどと思うには他に知らな過ぎて、今考えても幼い自分が醜い。
お互い学校以外で会うこともなければ、況して遊ぶこともない。
メールをしないこともないが、生活に触れるようなこともない内容で清々しい思いさえした。
何時だろうか、彼女が私と写真を撮りたいと言った。
あの日は卒業式だった。


そうして私達は卒業した。
彼女に毎日会えなくなった。
笑顔を見ることも、声を聞くこともなくなった。
連絡を取ろうと思えば取れたのに今まで一度もそうしていない。
それなのに、今こうして彼女と撮った最初で最後の写真を見て私は涙している。
怖かった。
連絡をして、彼女に会って、新しい生活に馴染んでいる姿を目にするのが。
あの時のあの時間が総て虚無になってしまうことが怖かった。




携帯のフォルダの中で微笑む彼女がこんなにも愛おしいなんてこと知りたくなかった。



2011/11/17

GUNMA



東京に来て一年半と一寸、思い出すことはないと思っていた出生地のことが頭を掠めること数回。
とはいえ思い出せるような思い出も、場所も人間も皆無だからただあの地の重い空気を想起する。
本当に何もない場所だった。



一面広がる真っ暗な水田の画像を切り取った夜20時の電車の車窓。
帰宅時間を過ぎたこの乗り物にはほとんど人がいない。
いても私と同じように何かしらの試験の為にこの時間まで家に帰らなかった人間と、
これからきっと友人の家に出かけるであろう人間のみ。
私は無意識にヘッドホンから流れる音楽を聴きながら自分以外を一人一人なぞってみている。

優先席に座っているカップル。
日系ブラジル人のカップル。
私の理解しえない言語でイチャついていた。
何の前触れもなく女が急に怒り出したと思えば男は興味がなさそうに携帯を操作する。
そんな一コマ。

真っ黒な制服に包まれる少女。
ブラウスのボタンを上まで締めて必死に単語帳を見詰める彼女。
何故だか可哀想だという気になる。
そんな一コマ。

数人でPSPに興じる男児高校生。
どうやらまだ3次元に興味がなさそうな男子生徒。
眼前に座る女子高生がミニスカートにも関わらず脚を開いていても気にならない様子。
いたって不健全。
そんな一コマ。

品のない下着を見せる女子高生。
友達と会話していてもその存在を無視する女子高生。
隣の温かい感覚よりも、携帯内の冷たい誰かの方が大切らしい。
そんな一コマ。

決まった駅から電車に乗ってバラバラな駅で降りていく障害者たち。
近くのセンターで学習や軽労働をする障害者たち。
最早彼らを誰も気にとめない。
煩ければプレイヤーの音量を上げればよいし、盛り上がってもいない会話の音量を上げればよい。
此処では彼らを気にした方が負けなのだ。
そんな一コマ。

そして私。
ジロジロと人々を凝視し、自分だけ他とは別と気取っている私。
何も変わらない。
他と何も変わらない。
この地のこの電車内の鬱々とした雰囲気から脱け出さない。
所詮この地の人間。
面白いことはない。
つらいこともない。
いつも出会うべき人間に出会い、別れるべき人間と別れいずれ自分も無くなると思考する。
そんな一コマ。





何が嫌でそこを出たのかは分からない。
只出ていきたかった。
その一心だった。
そうしてたどり着いた東京でふと思い出す故郷はいつも酷く哀しい。



2011/11/08

今日の交信




濃厚な付き合いの中で窒息してしまいそう。
中学生でもないのに、あの人はその人がお気に入りで、この人が嫌いでなんてことを気にしながら出会う筈もなかった客と話し、結局決めるのは自分自身なのに何の気なしに私に意見を求め、これ以上あるかっていうくらい適当に流す。ながす。私の前をさらさらと流れていく。声なんて音だけで、内容は皆無。「お似合いですね」「綺麗ですよ」定番の問答を繰り返す。繰り返す。廻る回る、目が回る。苦しくて息が出来ない。みんな本心を隠し、圧政に負け、流される。流れる。トイレはTOTO。音姫の音と共に放出され、流水音と共におさらば。ばいばい、私の楽しい職務。此処ではもうやっていけないし、やっていこうとなんておもってねぇんだよ、ボケが。自分が糞過ぎて笑えるレベル。ははははははははっははははっはははっはははっははははっはっはっははははははは。なにもない。何も残らない。作り笑い。消去。作り笑い。消去。もう平気かもなんて期待。消去。消去。消去。何もない。何も残らない。早く此処からいなくならなきゃ、おかしくなる前に逃げなくちゃ、分かっているのに足踏み、足踏み、いっちに!いっちに!聖者の行進!いっちに!いっちに!はー楽しい楽しい毎日が。口だけならば何とでもいえる。はー楽しい、幸せ。こんな幸せ者私以外に居ないんじゃないか?どうなんだい?おい!嘘ばっかり、私の口から出るのは嘘ばっかり。私の耳から入るのは嘘ばっかり。私の頭ん中嘘ばっかり。フィクションとフィクションに固められて、四の字固め。女子プロ入ろうか。それとも地方の温泉旅館で仲居でもやろうか。兎に角此処から出ていきたい。レッドブルもTOTOに流れてなんの意味もなかった。子供だましも大概にしろし。本当に辛いと涙なんて出なければ、誰の言葉も耳には入らない。優しく慰められようと、叱咤激励されようと、同情されようと、黙れ黙れ黙れ。戒を解いてしまいたい。お酒も、煙草もなんでもいいジャマイカ。所詮私ごときがアル中になろうと、ニコチン中毒になろうと、肝臓をむしばまれようと、肺を犯されようと、意味もなく怒るのは母親だけ。あーなんて素晴らしい世界。あーなんて光あふれた世界。内省的な人間であれ、ハングリーであれ、愚かであれ、生きるな!自分。この生を謳歌するな。苦痛で顔を歪めながら生きろ。そう妥協すれば、そう了解すればいい話ジャマイカ。人間に縋るな!自分を大切にしろ!自分の言葉以外信用できない。クレジットカードはよう作りたい。大人と認められたい。って願望を垂れ流すのやめたい。ってそういうこと言うのすらやめたい。やめたい。諦めたい。「よいにんげん」であることに何の意味があるのかと自分に問うても答えなどない。只視界が真っ暗になるのみ。哀しくなるだけ。自由がなんだ。それがなんなんだ。規定されて生きる方がもっと楽に呼吸出来た筈なのに、何故今こんなことになっている?脳内垂れ流し。恥ずかしいったりゃありゃしない。期待するな。自分に期待するな。他人に期待するな。

\BOYS BE AMBITIOUS/

2011/11/06

君なんだ


君なんだ
君だけなんだ

僕には君だけなんだ 君なんだ
他の愛なんて要らない 僕にはただ君なんだ
もう一度聞いてみても 僕にはただ君なんだ
もう君には他に愛する人がいるけど
どうしようもないんだ もう元に戻すことは出来ない
君の視線が入ってきた瞬間に
胸深く釘を打ち込まれた瞬間に
迷わず直ぐ君を選んだ
そう 僕には君なんだ

誰が何と言っても 僕には関係ないし
誰が悪く言っても 君だけを見つめるんだ
僕がもう一度生まれ変わっても ただ君だけだ
カチカチ 時が流れても
君を愛してると言っても 何千回何万回言っても
僕の胸の中が燃え尽きて 乾く唇が擦り切れる程
僕がもう一度生まれ変わっても ただ君だけなんだ
カチカチ 時が流れても
only for you

どんな言葉も要らない 僕にはただ君なんだ
遅すぎてしまったけど 僕にはただ君なんだ
間違った愛だと分かっているけど
諦められない 絶対逃せない
酷く冷たい僕の唇は また呼ぶよ
熱く君を探し求めて呼ぶよ
呼んでも返事のない君だけど
僕は待っているんだと







2011/10/19

『46億年の恋』冒頭






一光年離れた所から地球を見ると

一年前の地球が見える

千光年離れた所から地球を見ると

千年前の地球が見える

光は何事かにぶつかれば屈折し

乱反射する

乱反射する

どこかある一点










前を向けば一年前の地球が見え

右を向けば百年前の地球が見え

左を向けば千年前の地球が見え

後ろを向けば万年前の地球が見える

そんなある一点










そこで四方からくる光を

目を閉じて頭蓋骨の裏側で聴く

聴き取ったその微かな響きを

臓物を超えた胸の奥底で嗅ぐ

その嗅ぎ取られた色

その色彩で半透明のベールを紡ぐ

そしてそのベールで

西暦2005年ころの東京を覆い尽くす

最早

暦に刻まれてある数字に意味はなくなる

ベールは湿ったオブラートのように

とろりと溶ける

そして馴染みの風景が

じわりと変容していく

また遠い遠い記憶のように

朧に霞みもする

様々な欠落と印象の肥大が現れる











そっと目を開く

そこにこの作品の舞台がある

そこに悲しげな青年たちが

何かをなくした時代の青年たちが











例えていえば

これはそういうところで展開される

ミステリーだ




2011/10/13


貴方の手は

傷もなく綺麗なのに

節が角ばっていて

その男の人の特徴に

赦されない罪と

抜け出すことのできない甘さが

じんわりと滲む

乱暴に口内に突っ込まれ掻き回し

僕が逃げないようにと捕まえ

上から不敵に微笑み首を締める

貴方の指の総てが

僕の為にあるように思える

その手に今触れられている

僕の重なった部分から

貴方と繋がる

粒子単位でひとつになる

あゝ

それだけで

貴方以外の何物も

要らない

触点から焼かれ

じりじりと音がする

其の点は消えない痕になる

性的でもなんでもない行為が

僕を一番興奮させる

貴方の手が

僕を一番興奮させる








2011/10/06

だいぶ無理

本当は死にたくないのに死にたいって言っちゃう自分面倒くさい。
今の自分大好きなのに変わりたいとかほざく自分あり得ない。
誰も私に興味がないのが地球の中心から突きつけられてて絶望するしかないし、
いつもイライラしてるじゃんって言われてまた絶望してるし、
私がみんなのそばにいたところでなんにもなんないのに
本当誰得よ?
要らないでしょ、私という要素。
地球住民ひとりひとりが必要な人間一人ずつ選んで誰からも選ばれなかった人たちは強制終了制度作ろうよ。
もう、どっちにしたって誰も気にかけないなら要らないじゃん。
折角だから殺してもらいたい。
そんで、標本になって、作ってる最中に失敗して焼却処分されたい。
なにが言いたいか私も分からない。
兎に角頭の中が洪水みたいに言葉が溢れてて、こうやって書き留めないと出て行かなくて、苦しくて。
この文章こそ誰得?
でもよく分からないけど誰かに読んでもらいたい。
絶望してる時に欲しいのは励ましじゃなくて同情。
ぬるま湯みたいな同情。
可哀想だと思ってもらえれば本望。
私が世界一不幸せな女の子。
吐き気がする存在の人間。
東方神起より3Oh!3の方が健康的。
でもお前らふざけ過ぎ。
黙れ、うるさい。
所詮誰かと誰かの間の人間にしかなれない私は、唯一を目指して生きているつもりですが無理そうです。
そのまえに壊れそうです。
ごめんね、今ふざけたメール送ってしまってる人ごめんね。
いろんな人を選んで付き合ってきたのに結局選んだ自分が選ばれてるという大きな問題にぶち当たって苦しい。
苦しい。
苦しい。
苦しい。
苦しい。
誰かに全身全霊倒れこみたい時、私には誰もいないからベッドに倒れこむ。
それだけ。
結局人生それだけ。

2011/10/01

創世記


宗教学の授業受けて

旧約聖書の創世記読んでたら

人間と天使の誕生の話から

BLの物語が浮かんだって言ったら

キリスト教徒に怒られるかなぁ。

2011/09/30


天使という名前を持つ貴方は

神によって生み出された最高の被造物

その存在と全く違わぬ姿で

この汚い世界で息をしている

どれ程尊く心臓を動かしても

存在自体同一ではない貴方に

人間が勝る筈がない

況して虚勢を張るばかりで

人間の欠如と不完全さを

体現したような俺とはまさしく

天と地の差

愚かな人間は無知でいれば

幸福を保っていられたのに

どこからか知恵を手に入れ

自己を認識してしまった

それが苦しみの始まりだった

人々は神が創造したものは

常に善存在であると言うけれど

悪の根源である欠如と不完全を

捏ね繰り回して

僕は

生きていることを感じる




.

2011/09/25

絶叫する僕と静観する貴方


僕を愛して!

誰でもよくない

貴方に愛されたいの!

たとえ今貴方の中に僕がいなくても

僕は絶対貴方を手に入れる!

僕には貴方しかいない!

隣にいる女はただの飾りでしょ?

僕の方が貴方に似合ってるに決まってる!

ねぇだから僕を愛して!



愛して!

愛して!

愛して!

愛して!

愛して!

愛して!



そうじゃなきゃ僕

何するか分かんないよ。

自分が怖い。

こんな狂気を持った自分が怖い。

全部、全部、貴方のせい。

貴方が僕に優しいから。

僕を叱ってくれないから。

僕の存在を認めようとするから悪いんだ。

いっそ嫌いになってくれれば良かった。

そうすれば僕も貴方もこんなに苦しまなくて済んだんだ。

そう、全部、全部、貴方のせい。





.

2011/09/21

僕の横で静かに眠る貴方の顔には、安らぎと苦悩が見え、それは僕のそれと似ている。そして衝動的に貴方に跨り、首に手を置いてみる。愛おしい貴方は、そんな時でも美しく、儚い。 「そのまま力入れて、苦しめて殺してよ。」 いつの間にか目を覚ましていた貴方が、目を瞑ったまま僕に言う。 「じゃあ僕を見て。お前から命を奪う僕の顔をちゃんと見てよ。そんでその目に焼き付けて。目を瞑っても僕の顔が見えるくらい、どこに行っても僕を覚えていられるくらい。」 貴方はふっと笑ってその痛いほどの視線を僕に送る。背筋を走る快感。嗚呼、僕はまだ生きている。 指の一本一本に力を込め、細い首に絡め、圧をかけていく。力を入れるほどに首に食い込んでいく指と、苦しんでいく顔を見れば、貴方をやっと手に入れられた思いに、また快感が押し寄せる。抵抗することなくただ僕を受け入れる貴方は、まるで人形のよう。その瞬間僕から力が抜けていった。 「殺してよ。ねぇ。」 出来ない。僕には出来ない。貴方がいないこの世界が恐ろしくて、あまりにも虚無で、想像すらできない。その気持ちに反応したようにこみ上げた涙は貴方の頬に落ちては滴る。貴方を濡らす雨になる。 もう少しこのままと望むけれど、その望みも叶うか分からない。僕と貴方の関係が危ういことは初めから分かっていて、覚悟していた筈のことだった。でもそれが赦されることはないと実感してしまった時、それなら貴方を完全に手に入れたいと望んだ。それなのに、それさえ叶いそうにない。 「お願い、俺の命を消して。お前がやってくれなくても俺はもう耐えられない。もうこんな世界にいたくない。」 悲痛な貴方の声が僕の鼓膜を振動させ、脳内に響く。他の人が貴方の息を止めることなど考えたくない。貴方は僕の手で堕ちていく。嗚呼、神様。僕等はそんなに罪深いのですか?僕等が生きていることが罪なのですか? 人を愛することがどうして罪なのか。 僕の胸の中で次第に冷たくなる貴方は、ますます美しく鮮やかに僕の記憶になっていく。やっと手に入れた。もう絶対に離さない。 .

2011/09/20

終電近くの山手線池袋駅は何時も煩くて、私の気持ちなど考えようともしない。
あの人は何を求めて声を張り上げるのだろう。
この人は何を求めてレールを見続けるのだろう。
私は何を求めて此処にいるんだろう。

2011/09/17

悪魔の最期





ずっと待っていた。
私はここでずっと貴方を待っていたの。





初めて見た時の貴方はとても美しくて、
華のように笑う姿は私にはとても眩しかった。
無邪気で素直でそれなのに不器用な貴方は多くの人から愛され、
私もそんな貴方から目を離せなくなっていた。
だけど貴方を見続けるうちにその暗い部分も見てしまった。
笑っていても哀しみを秘め、泣いていても喜びを噛みしめる、
狡猾でニヒルな素顔は私にとっては共有するもので、
知れば知るほど身近に感じた。
それでも触れられないその存在に愛しさがつのった。




老いる毎に貴方の周りからは人がいなくなり、
公に出る機会が減ればみるみるうちに人々から忘れ去られていったけれど、
貴方は凛としたまま美しく生きていた。
最期まで眩しかった。




そして貴方はここに来た。
その姿は初めて会った時のままだった。
いや、あの時以上に美しかった。
やっと貴方を手に入れた。
今ここに貴方がいる。
貴方に触れることが出来る。








「お前誰?ってかここどこ?」


無知な貴方は私にそう聞いた。
どこまでも愛おしく美しい貴方。
後数歩踏み出し、手を伸ばせば手に入る。
その瞬間、私は消えてなくなった。
貴方に会いたいという願いが叶う時、
それが私の消滅の時と決められていた。
ずっと前から分かっていたのに、こんなにも辛いなんて。
貴方が泣いている。
私を抱き、何か叫びながら泣いている。
初めて味わったその温かさに、私は涙した。








.


In Heaven







僕は愚かだった。
自分のことに一生懸命になるあまりに、愛する君のことを気にかけることが出来なかった。
こんなにも愛しているのに、君はいなくなった。












君は冷たい台の上に横たわったまま動くこともなく、僕の遅刻にいつものように文句を言うこともなく、ただ横たわっていたけど、顔だけは生きてるみたいにとても綺麗で、やっぱりまだ生きてるんじゃないかって思っては、その冷たさにハッとした。
どれだけ強く握っても、しなやかさを失った君の手は、僕に残酷な現実を伝えた。












君の葬儀に集まった人たちは、皆一様に君への惜別の思いを述べ涙を流したけど、誰一人として、何故君がいなくなったのか、と問う人はいなかった。
ただ一人僕は静かになった部屋で君と二人きり、あの日のことを思い出す。
君がいなくなったあの日のことを。












あの日、君から電話がかかった。
気づいていたのに僕はそれを無視した。
喧嘩していたわけでも、君の声が聞きたくなかったわけでもなく、なんとなく出ることを躊躇い、電話が切れた数秒後君はこの世からいなくなった。




「帰ってきてください。そして僕を叱ってください。」



















.

綺麗好き

人間は綺麗好き過ぎる。
異物を排除し、忌避することで生きている。
毎日がその取捨選択の行為の連続。
生きる意味が全てそこに集約される。
そして私は排除され、忌避される存在。
生きていることを否定される。
生きている意味を削除される。

2011/09/16

吐き気がする僕の想い



笑っていた。

笑っていた貴方。

笑っていた貴方を愛する僕。

笑っていた貴方を愛する僕を待つ現実。




触れてはいけない。

触れてはいけない貴方。

触れてはいけない貴方を想像する。

触れてはいけない貴方を想像して満たされる僕。





何も知らない。

何も知らない貴方。

何も知らない貴方を見つめる。

何も知らない貴方を見つめる僕。

何も知らない貴方を見つめる僕の歪んだ想い。








愛している。

愛している。

愛している。

愛している。

愛している。

愛している。

愛している。

愛している。

愛している。

愛している。

愛している。

愛している。







誰かに理解されようなどとは思わない





.

2011/09/06

苦しく縫いつけられた口先

僕等は決して何も言わない。

求めあう言葉なく、お互い知り過ぎる快感を貪る。

この関係がどんな意味を持つのかを、

今は一生懸命考えないように、

心を殺す。

僕等は仲間で、

親友で、

男同士で、

それ以上の何かはある筈もなければ、

あるべきでもない。

でも、

今、

こうして互いの身体を探り合っている。

いつからだろうか?

形のないものが弾けるように、

酒の力を借りた僕たちは初めて繋がった。

あの時の背徳感と違和感と痛みは、

今でも忘れない。

もともと快感を求めるだけのこの行為に、

あの時心地よさは無かったけど、

もう戻れない場所に到ったという達成感があった。

そして僕等はそのことを喜んでいた。

でも口にすることはできなかった。

だってそれはおかしな関係だから。

初めて繋いだあの時生まれた背徳感は、

回を重ねる毎に大きくなり、

今にも僕等を押しつぶしそう。





誰が肯定してくれるの?

肯定される価値のあることなの?

僕等の我儘なの?

(それでも何故君はこんなに愛おしいの?)

僕等は互いに確かめ合わず、

少しばかり快感を貪る為と僕はひたすら肯定する。

きっとそれもいつかは崩れ去る。

君に触れることですら恐れる日がきっと来る。

でも、

それまでは、

どうかこのまま、

誰も、

気づかないで。








.

2011/08/08

『岡山女』

暇なので二冊目。
岩井志麻子はこのくらいの時代ものがやっぱりいい。
このシステム化されて無機質で面白味も無い現代を書いてもなにもそそられない。

『軽蔑』

映画ではなく、小説を読んだ。
中上健次は今まで読んだことなかったし興味もなかったけれど私にはとても読みやすかった。
特にセックスの描写がとても綺麗で生々しく、甘美だけれどいやらしくなくて素敵だった。
終わりにはまだ納得は出来ないけれどそのうちに消化できると思う。
特に好きな部分。
「月があまりに美しいから、汚れたこの世が疎ましくなると、自分は、ひょっとするとあそこの人間で、ここは仮の暮らしなのではないか、と思う。
空に満ち欠けする光る物がかかっている不思議に打たれた時、この世に有り得ない事が起こるという残酷な認識が芽生える。」

2011/08/07

2011/08/07

事実地元の祭りというものに三年ぶりくらいに行った。
その前に祭り以前の話を少し。

地元に帰るということはなんだか神聖な感じがしてちょっと気が引ける。
帰ってもしたかったことと言えば図書館に行って受験生の中で黙々と本を読むこととか、古本屋さんに行くとかそんな些細なことなんだけど毎回欠かさずしている。
古本屋さんって言ってもブックオフだし特に珍しいこともないけど今日は岩井志麻子の『岡山女』を買ってきた。
彼女のせいで岡山のイメージが著しく悪い。
そして昔よく読んでた漫画家さんの本を手にとってなんで私はこれを好んでいたのだろうと
真剣に考えたりしていた。

そして祭りに参加した。
参加というのは少し仰々しい。
カップルの夏の一大イベントの邪魔をした程度だと思う。
屋台とかそういうのも楽しかったけれど八木節踊りを見て初めて愛郷心とかいうものを抱いた。
そこで踊り跳ねる人はみな輝き、私がどれだけ着飾っても彼らには勝てない。
力強く踊る彼らを見てその夜の雨さえもまぁいいかと許した。

テレビの中で泳ぐ金魚

どうして僕じゃなかったの?
なんで僕を選んでくれなかったの?
そんな事なら僕にも出来るのに。
最後まで僕は君の人生に関わることが出来なかった。


僕と君が始めて出会った時のことを暗い独房でずっと考えていた。
僕はやっと出会えたと思ったんだ。
幼い頃に一度だけ見た本物の男に。
それから僕は守られてるなんて勘違いして、
特別だなんてくだらない感情抱いて、
突き放されても必死で縋り付いて、
それでも僕は君を求めた。


そして、あの時のことは今でもまだ考えている。
あの時三重の虹が君にどんな意味を持っていたかは分からない。
でももし僕が君を抱きしめなかったら。
それとも僕が君を全て受け止められていたら。
なにか変わったかな?
そしたら君はまだこの世界にいたのかな。
ロケットに乗って行ってしまうことなんてなかったのかな。
分からない。
総て分からない。
僕はまだここにいるのに。
まだ君を想って息をしているのに。

2011/07/31

Luna llena

もういいの?
つまんないの。
僕一人で満足しないでよ。




毎日、月が出ると僕は夜の誘惑に出会いに行く。
熱帯夜の空はどこまでも黒く、僕の心をずんと重くする。
耳を塞いで感覚を尖らせて今日の僕を必要としてくれる人間を探してみる。
どこにでも不思議な雰囲気を纏う人間がいて、今夜の誘惑はぴりっとした感覚だった。


「ひとり?」
「そうだよ。僕と話したいの?」
「話したくはない。そのなんでも見透かしているような君の皮をはいでみたいだけ。」
「そんなこと言っててなんとかなると思ってるの?」
「なんとかなるんじゃない。なんとかする。」


はじめに見た時からやばいだろうなと思ったけど、そんなものではなかったらしい。
でもそういうのもいい。
僕が知らない僕を必要としてくれる?
ぼくの嫌いな僕を愛してくれる?
そして綺麗に僕を捨ててくれる?



夜のもっと暗い夜の部分。
君が連れて行ってくれる新しい世界。
どこに行くのかとか、何をするのかとかそんな無粋なことは聞かないけど、僕は何故か知っている。
僕には君の欲望が見える。
君には僕の欲望が見えるでしょ?


僕の歩幅なんて気にせず引きずるように連れてこられた部屋は
部屋と言っていいか分からないくらいになにもない。
何もない中にただふたり。
呼吸を奪われ、視界を奪われ、次第に神経もしっかりしなくなる。
少しずつ互いの余裕がなくなっていくのが分かる。
ふと、君を見上げると君は美しく染まり、僕の中を変化させる。
君がすること総て僕には悦びでしかなくて歯痒い。


「まだ。」
君は短くそう呟く。
もしかしたらその先を言っていたかもしれないけれど、
意識が朦朧としてきた僕に判断出来ることなんでないに等しい。
強く、強く、思い出せるように。
しっかりと刻む。



ぱん。
一瞬なにが起こったか分からなかったけど、頬の痛みと共に平手打ちされたと気づく。
「まだ。だめ。」
そう。もっと。
もっと僕を求めて。
僕ひとりじゃ満足しないで。



それから僕は何度も揺り起こされたけど、とうとう君が僕に瞑った目を見せることはなかった。
だから、次は捨てられる瞬間を静かに待つ。
しんと静まったこの箱の中は夏だというのにひんやりとしている。

「次はいつ会いたい?」
「え?」
「今度こそ俺を跪かせてみろよ。」


瞬間、涙が流れて止まらなかった。
見られないように顔を伏せてみても意味がない。
そして少しずつ何かが満たされ、熱くなる。
そう。僕を求めて。
もっと、もっと広げて。
余裕を僕に見せて。
いつか僕に飽きるまで、僕を捨ててくれるまで。

2011/07/30

Suffering

初めはその違和感に吐き気がした。
全身で抵抗しても貴方の力には敵わなくて、抵抗しても逃れられなくて、最後はただ疲れ切っていた。
でもふと哀しそうな顔を見た時、僕の中に甘美な気持ちが生まれた。
そのうちに僕は声を殺して君の視線を隠した。
苦しいなら本当の気持ちに気づかなくちゃいけない。
でもどうか気づかないで。
僕も気づかないように総てを隠し、2人だけの世界を作るよ。
苦しみは伝染していく。
貴方の哀しい顔が僕の喜びにつながる。




総てが終わった部屋には安心も心地良さもない。
ただ残る貴方の苦悩。
ただ残る僕の苦悩。
愛しいという気持ちの愚かさには反吐が出る。
早く消えてなくなって感覚だけの生き物に変えてくれ。
そう頭に浮かんだけれどまた気づかないふりをした。
僕も苦しみ続けなくちゃいけない。
貴方と一緒に苦しむことが僕の唯一の悦びなんだ。

2011/07/17

ともだち

貴女にも友達がいて私にも友達がいて、私にも友達がいて貴方にも友達がいて、彼方にも友達がいて私にも友達がいて、私にも友達がいて貴郎にも友達がいて。


それでも私はあなたの1番でありたい。
あなたが私の1番だから。

2011/07/15

幸せにも量があって、常に交換され、保存されながら存在してるものだからみんなが幸せなんてあり得ない。
そして私は全人類幸福を望まない。

2011/07/14

言葉の性行為

柔らかい髪、冷たい瞳。

髪に指を通してそのまま抱きしめる。

君の匂いを感じる。

君の腕と僕の腕、僕の脚との君の脚、君の指と僕の指。

君が上で僕が下、次は僕が上で君が下。

君は僕を内に感じ、僕は君を外に感じる。






繋がった僕らは繋がり続け、その部分から溶けていく。

君が僕に流れ、僕が君に流れる。

脳が麻痺する、思考が停止する。

しゅわしゅわという音がして脳みそまでが溶けていく。

柔らかい髪、冷たい瞳。

僕のもの、僕自身、僕の一部。






目が覚めると僕は一人でベッドに横たわり天井を見ていた。

ゆっくりと目を閉じる。

ゆっくりと息を止める。

君は死んでいて僕は生きている。

僕が死んでいて君が生きている。

君はここにいない。

僕はここにいる。

2011/07/07

彼の腕には薔薇の花が咲いている。
とても綺麗で私は見惚れてしまう。
お願い私を掴んで離さないで。
浴衣を来た人をたくさんみる日。
日本人であることが嫌になる日。

2011/07/06

オーバーサイズのTシャツに、ジーンズを履いていたハーフの男の子。
髪の毛をなでつけて、ワイシャツにベストを着て、スキニーパンツを履いて欲しい。
私の叶わない願いだけど。
香水と汗の匂いのする廊下。
当たり障りのない生活を送りたい。
もう一切傷つきたくないし、煩わしい関係なんて嫌だ。
どうして心を乱されるの。
私が幼いのは十分わかってる。
それを踏まえても誰かに気兼ねなんてしたくない。
甘いなんてわかってる。
そういうのは求めてない。
ただ発言することまで制限されるのはわからない。
そのせいでかなしくなるのは嫌だ。
本当に。

2011/07/03

「私あなたがピアスしている横顔が好きなの。」
君は僕の横でふとそう言った。


ピアス


僕が女の人を好きなのには特別な理由があるわけではない。ただ出会えたからその出会いを全部のがさないでおきたいだけ。そして自分がこのキャラクターで苦しむことも分かってる。だからってどうしろっていうの。
「鍵はどこにあるのかな。」
このジレンマから脱け出す鍵。永遠に見つかりそうにない鍵。
"トゥルルル...."
よく覚えてない女性からの電話。多分モデルかなんかだった。急に呼び出されて初めて2人きりで会うと、なぜかお互い無言になった。君は僕を呼んだ理由を言わないし、僕も聞かない。でも2人とも理由を知っていた。お互いを求めずにはいられなかった。僕はこれが鍵だと確信した。
「きっとあなたは苦しみを紛らわせたいのよ。そして心の中の暗闇を見られたくないから優しくするの。」
僕の総てを見抜くような言葉。ますます君から離れられなくなる。あまりに一緒にいすぎて互いの癖がよくわかる。君は僕の右側で寝る。僕はピアスを付けたまま寝る。それは君がそう望んだから。

それは突然だった。君は僕を残してどこかに行った。パリに行ったとか死んだとかっていう噂も聞いた。とにかく君はいなくなった。鍵がなくなり扉は固く閉ざされたまま。それでも僕は生活している。

「どうして僕がピアスをしなくなったかって?なんだかピアスを見ていると僕自身も痛く感じちゃうようになったんですよ。」

僕のピアスの痛みはなかなか消えない。

我儘

誰かに全力で倒れこみたい時にそこには誰もいない。
支えになりたいときに誰もそれを望んでくれない。
どれだけ頑張って発信しても誰もキャッチしてくれない。
怠惰な私は誰にも必要とされない。

2011/06/27

しゅわん、しゅわん

自分のことで一生懸命になることもなかったし、なられることもなかった。だれがこの私を必要とし、全身全霊かけてぶつかってくれるのか。わからないことばかりだから頭が重い。重い頭は転がって蹴飛ばされる。ころころころころひたすら転がる。そのうち中身がなくなってただの入れ物になる。頭の人形、思考の放棄。

斜めの空間

2011/06/26

眠気と私

すべてを壊されたい。
安全で平和な世界を、
単純で無意味な私を。

2011/06/22

凝り固まった脳内

直接手で掴んでぐちゃぐちゃにしたい。
それでばらばらに崩れてしまったらそれで終わり。
そういうこと。

意志

「意志」ってなんなんだろう。
どうして軽視するんだろう。
すぐ取り消したり謝ったり。
ある人は「揉め事が面倒だから。」という。
どうして口論を嫌うんだろう。
「口論の時間は無駄だから。」
どうして無駄なんだろう。
それはきっとその口論が意志のない言葉から始まっているから。
放棄しないとその無意味だった言葉の責任を取らなくてはいけなくなるから。
それならどうして意見するの。
どうして私を傷つけるの。

火星人との会話

「恋愛は一部であって全部じゃないわ。」
「恋愛ってなんなの?って言ってた頃とは変わったね。なんていうか余裕だね。」
「人は成長しなきゃならないの!」
「あーそう。」
「成長してる?」
「そういうのいいよ。絡んでごめん。成長とか考えないように生きてるから。そっとしておいて。」
「サークルの幹事長になってみるのもきっと成長につながるよ。」
「もう(あなたのいる)サークルには行かないから大丈夫^^」

嫌み、茶番。
反吐が出る幸せの押し売り。

2011/06/20

心が黒くなり、次第に鼓動が弱まって、自分自身の意志が飲みこまれそうになる時必死にそれを抑えつけようとする自分はいなくなった。
汚い部分を露わにし、自己融解していく姿はおぞましく醜い。
醜くて醜くて人間のものとは思えないそれは隠そうとしても隠しきれない。
吐き気とともにやってきて私を覆う。
ゴミ袋に詰めて捨てる価値もない。
でも私はそんな自分を愛してる。
おかしくなったこの世界を愛してる。

2011/06/19

彼は私の匂いがした。
私はそれが心地よくて彼から離れることができなかった。

「匂い」

古い町屋が残る川沿いの道にその古着屋はあった。
何の気なしに初めてその店に入った時、埃くさくて息が出来なかったことだけ覚えている。
彼はカウンターから私に声をかけ、声をかけられた私は彼の前に置いてあった時計に目がいった。
14:36。
古着の他にアンティーク小物が取り揃えてある店内は薄暗く、オレンジ色のランプで照らされているのみ。
敷地は全く広くないのに迷路に迷い込んだ気がした。
全ての始まりは何の変哲もなく、だらだらとスタートする。
私はそれから毎日その店に通った。
彼と私が近づくのに時間はかからなかった。
彼はお店の二階の倉庫兼事務所に寝泊まりしていて、そこは埃と煙草の匂いがして、
キスもセックスも全てそこでした。
そこでの怠惰で生ぬるい情事は私の感覚をとことん鈍らせた。
彼はいつも私の背中にキスをしてから眠りに就く。
背中に感じる彼の寝息が私の鼓動となる。
二つが溶けて混じり合い一つの生き物になる。
彼は私の匂いがした。
彼が私に語りかけることは何もない。
ただキスしてセックスするだけ。
一つになって息をするだけ。

いつものようにお店に行くと、そこには服も小物も家具も彼もなかった。
倉庫にはたった一つベッドが置かれていた。
彼は奥さんと子供とどこかに行ってしまった様子で、部屋はひっそりと寝息を立てる。
私はまだ埃と煙草の匂いがする部屋のベッドに横たわり掛けてある時計を見る。
14:36。
何も始ってはいなかった。
虚構と喪失の世界。
そこで静かに息を止めてみる。
私と同じ匂いがした。