2011/09/30


天使という名前を持つ貴方は

神によって生み出された最高の被造物

その存在と全く違わぬ姿で

この汚い世界で息をしている

どれ程尊く心臓を動かしても

存在自体同一ではない貴方に

人間が勝る筈がない

況して虚勢を張るばかりで

人間の欠如と不完全さを

体現したような俺とはまさしく

天と地の差

愚かな人間は無知でいれば

幸福を保っていられたのに

どこからか知恵を手に入れ

自己を認識してしまった

それが苦しみの始まりだった

人々は神が創造したものは

常に善存在であると言うけれど

悪の根源である欠如と不完全を

捏ね繰り回して

僕は

生きていることを感じる




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2011/09/25

絶叫する僕と静観する貴方


僕を愛して!

誰でもよくない

貴方に愛されたいの!

たとえ今貴方の中に僕がいなくても

僕は絶対貴方を手に入れる!

僕には貴方しかいない!

隣にいる女はただの飾りでしょ?

僕の方が貴方に似合ってるに決まってる!

ねぇだから僕を愛して!



愛して!

愛して!

愛して!

愛して!

愛して!

愛して!



そうじゃなきゃ僕

何するか分かんないよ。

自分が怖い。

こんな狂気を持った自分が怖い。

全部、全部、貴方のせい。

貴方が僕に優しいから。

僕を叱ってくれないから。

僕の存在を認めようとするから悪いんだ。

いっそ嫌いになってくれれば良かった。

そうすれば僕も貴方もこんなに苦しまなくて済んだんだ。

そう、全部、全部、貴方のせい。





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2011/09/21

僕の横で静かに眠る貴方の顔には、安らぎと苦悩が見え、それは僕のそれと似ている。そして衝動的に貴方に跨り、首に手を置いてみる。愛おしい貴方は、そんな時でも美しく、儚い。 「そのまま力入れて、苦しめて殺してよ。」 いつの間にか目を覚ましていた貴方が、目を瞑ったまま僕に言う。 「じゃあ僕を見て。お前から命を奪う僕の顔をちゃんと見てよ。そんでその目に焼き付けて。目を瞑っても僕の顔が見えるくらい、どこに行っても僕を覚えていられるくらい。」 貴方はふっと笑ってその痛いほどの視線を僕に送る。背筋を走る快感。嗚呼、僕はまだ生きている。 指の一本一本に力を込め、細い首に絡め、圧をかけていく。力を入れるほどに首に食い込んでいく指と、苦しんでいく顔を見れば、貴方をやっと手に入れられた思いに、また快感が押し寄せる。抵抗することなくただ僕を受け入れる貴方は、まるで人形のよう。その瞬間僕から力が抜けていった。 「殺してよ。ねぇ。」 出来ない。僕には出来ない。貴方がいないこの世界が恐ろしくて、あまりにも虚無で、想像すらできない。その気持ちに反応したようにこみ上げた涙は貴方の頬に落ちては滴る。貴方を濡らす雨になる。 もう少しこのままと望むけれど、その望みも叶うか分からない。僕と貴方の関係が危ういことは初めから分かっていて、覚悟していた筈のことだった。でもそれが赦されることはないと実感してしまった時、それなら貴方を完全に手に入れたいと望んだ。それなのに、それさえ叶いそうにない。 「お願い、俺の命を消して。お前がやってくれなくても俺はもう耐えられない。もうこんな世界にいたくない。」 悲痛な貴方の声が僕の鼓膜を振動させ、脳内に響く。他の人が貴方の息を止めることなど考えたくない。貴方は僕の手で堕ちていく。嗚呼、神様。僕等はそんなに罪深いのですか?僕等が生きていることが罪なのですか? 人を愛することがどうして罪なのか。 僕の胸の中で次第に冷たくなる貴方は、ますます美しく鮮やかに僕の記憶になっていく。やっと手に入れた。もう絶対に離さない。 .

2011/09/20

終電近くの山手線池袋駅は何時も煩くて、私の気持ちなど考えようともしない。
あの人は何を求めて声を張り上げるのだろう。
この人は何を求めてレールを見続けるのだろう。
私は何を求めて此処にいるんだろう。

2011/09/17

悪魔の最期





ずっと待っていた。
私はここでずっと貴方を待っていたの。





初めて見た時の貴方はとても美しくて、
華のように笑う姿は私にはとても眩しかった。
無邪気で素直でそれなのに不器用な貴方は多くの人から愛され、
私もそんな貴方から目を離せなくなっていた。
だけど貴方を見続けるうちにその暗い部分も見てしまった。
笑っていても哀しみを秘め、泣いていても喜びを噛みしめる、
狡猾でニヒルな素顔は私にとっては共有するもので、
知れば知るほど身近に感じた。
それでも触れられないその存在に愛しさがつのった。




老いる毎に貴方の周りからは人がいなくなり、
公に出る機会が減ればみるみるうちに人々から忘れ去られていったけれど、
貴方は凛としたまま美しく生きていた。
最期まで眩しかった。




そして貴方はここに来た。
その姿は初めて会った時のままだった。
いや、あの時以上に美しかった。
やっと貴方を手に入れた。
今ここに貴方がいる。
貴方に触れることが出来る。








「お前誰?ってかここどこ?」


無知な貴方は私にそう聞いた。
どこまでも愛おしく美しい貴方。
後数歩踏み出し、手を伸ばせば手に入る。
その瞬間、私は消えてなくなった。
貴方に会いたいという願いが叶う時、
それが私の消滅の時と決められていた。
ずっと前から分かっていたのに、こんなにも辛いなんて。
貴方が泣いている。
私を抱き、何か叫びながら泣いている。
初めて味わったその温かさに、私は涙した。








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In Heaven







僕は愚かだった。
自分のことに一生懸命になるあまりに、愛する君のことを気にかけることが出来なかった。
こんなにも愛しているのに、君はいなくなった。












君は冷たい台の上に横たわったまま動くこともなく、僕の遅刻にいつものように文句を言うこともなく、ただ横たわっていたけど、顔だけは生きてるみたいにとても綺麗で、やっぱりまだ生きてるんじゃないかって思っては、その冷たさにハッとした。
どれだけ強く握っても、しなやかさを失った君の手は、僕に残酷な現実を伝えた。












君の葬儀に集まった人たちは、皆一様に君への惜別の思いを述べ涙を流したけど、誰一人として、何故君がいなくなったのか、と問う人はいなかった。
ただ一人僕は静かになった部屋で君と二人きり、あの日のことを思い出す。
君がいなくなったあの日のことを。












あの日、君から電話がかかった。
気づいていたのに僕はそれを無視した。
喧嘩していたわけでも、君の声が聞きたくなかったわけでもなく、なんとなく出ることを躊躇い、電話が切れた数秒後君はこの世からいなくなった。




「帰ってきてください。そして僕を叱ってください。」



















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綺麗好き

人間は綺麗好き過ぎる。
異物を排除し、忌避することで生きている。
毎日がその取捨選択の行為の連続。
生きる意味が全てそこに集約される。
そして私は排除され、忌避される存在。
生きていることを否定される。
生きている意味を削除される。

2011/09/16

吐き気がする僕の想い



笑っていた。

笑っていた貴方。

笑っていた貴方を愛する僕。

笑っていた貴方を愛する僕を待つ現実。




触れてはいけない。

触れてはいけない貴方。

触れてはいけない貴方を想像する。

触れてはいけない貴方を想像して満たされる僕。





何も知らない。

何も知らない貴方。

何も知らない貴方を見つめる。

何も知らない貴方を見つめる僕。

何も知らない貴方を見つめる僕の歪んだ想い。








愛している。

愛している。

愛している。

愛している。

愛している。

愛している。

愛している。

愛している。

愛している。

愛している。

愛している。

愛している。







誰かに理解されようなどとは思わない





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2011/09/06

苦しく縫いつけられた口先

僕等は決して何も言わない。

求めあう言葉なく、お互い知り過ぎる快感を貪る。

この関係がどんな意味を持つのかを、

今は一生懸命考えないように、

心を殺す。

僕等は仲間で、

親友で、

男同士で、

それ以上の何かはある筈もなければ、

あるべきでもない。

でも、

今、

こうして互いの身体を探り合っている。

いつからだろうか?

形のないものが弾けるように、

酒の力を借りた僕たちは初めて繋がった。

あの時の背徳感と違和感と痛みは、

今でも忘れない。

もともと快感を求めるだけのこの行為に、

あの時心地よさは無かったけど、

もう戻れない場所に到ったという達成感があった。

そして僕等はそのことを喜んでいた。

でも口にすることはできなかった。

だってそれはおかしな関係だから。

初めて繋いだあの時生まれた背徳感は、

回を重ねる毎に大きくなり、

今にも僕等を押しつぶしそう。





誰が肯定してくれるの?

肯定される価値のあることなの?

僕等の我儘なの?

(それでも何故君はこんなに愛おしいの?)

僕等は互いに確かめ合わず、

少しばかり快感を貪る為と僕はひたすら肯定する。

きっとそれもいつかは崩れ去る。

君に触れることですら恐れる日がきっと来る。

でも、

それまでは、

どうかこのまま、

誰も、

気づかないで。








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