2011/09/21

僕の横で静かに眠る貴方の顔には、安らぎと苦悩が見え、それは僕のそれと似ている。そして衝動的に貴方に跨り、首に手を置いてみる。愛おしい貴方は、そんな時でも美しく、儚い。 「そのまま力入れて、苦しめて殺してよ。」 いつの間にか目を覚ましていた貴方が、目を瞑ったまま僕に言う。 「じゃあ僕を見て。お前から命を奪う僕の顔をちゃんと見てよ。そんでその目に焼き付けて。目を瞑っても僕の顔が見えるくらい、どこに行っても僕を覚えていられるくらい。」 貴方はふっと笑ってその痛いほどの視線を僕に送る。背筋を走る快感。嗚呼、僕はまだ生きている。 指の一本一本に力を込め、細い首に絡め、圧をかけていく。力を入れるほどに首に食い込んでいく指と、苦しんでいく顔を見れば、貴方をやっと手に入れられた思いに、また快感が押し寄せる。抵抗することなくただ僕を受け入れる貴方は、まるで人形のよう。その瞬間僕から力が抜けていった。 「殺してよ。ねぇ。」 出来ない。僕には出来ない。貴方がいないこの世界が恐ろしくて、あまりにも虚無で、想像すらできない。その気持ちに反応したようにこみ上げた涙は貴方の頬に落ちては滴る。貴方を濡らす雨になる。 もう少しこのままと望むけれど、その望みも叶うか分からない。僕と貴方の関係が危ういことは初めから分かっていて、覚悟していた筈のことだった。でもそれが赦されることはないと実感してしまった時、それなら貴方を完全に手に入れたいと望んだ。それなのに、それさえ叶いそうにない。 「お願い、俺の命を消して。お前がやってくれなくても俺はもう耐えられない。もうこんな世界にいたくない。」 悲痛な貴方の声が僕の鼓膜を振動させ、脳内に響く。他の人が貴方の息を止めることなど考えたくない。貴方は僕の手で堕ちていく。嗚呼、神様。僕等はそんなに罪深いのですか?僕等が生きていることが罪なのですか? 人を愛することがどうして罪なのか。 僕の胸の中で次第に冷たくなる貴方は、ますます美しく鮮やかに僕の記憶になっていく。やっと手に入れた。もう絶対に離さない。 .

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