2011/09/17

悪魔の最期





ずっと待っていた。
私はここでずっと貴方を待っていたの。





初めて見た時の貴方はとても美しくて、
華のように笑う姿は私にはとても眩しかった。
無邪気で素直でそれなのに不器用な貴方は多くの人から愛され、
私もそんな貴方から目を離せなくなっていた。
だけど貴方を見続けるうちにその暗い部分も見てしまった。
笑っていても哀しみを秘め、泣いていても喜びを噛みしめる、
狡猾でニヒルな素顔は私にとっては共有するもので、
知れば知るほど身近に感じた。
それでも触れられないその存在に愛しさがつのった。




老いる毎に貴方の周りからは人がいなくなり、
公に出る機会が減ればみるみるうちに人々から忘れ去られていったけれど、
貴方は凛としたまま美しく生きていた。
最期まで眩しかった。




そして貴方はここに来た。
その姿は初めて会った時のままだった。
いや、あの時以上に美しかった。
やっと貴方を手に入れた。
今ここに貴方がいる。
貴方に触れることが出来る。








「お前誰?ってかここどこ?」


無知な貴方は私にそう聞いた。
どこまでも愛おしく美しい貴方。
後数歩踏み出し、手を伸ばせば手に入る。
その瞬間、私は消えてなくなった。
貴方に会いたいという願いが叶う時、
それが私の消滅の時と決められていた。
ずっと前から分かっていたのに、こんなにも辛いなんて。
貴方が泣いている。
私を抱き、何か叫びながら泣いている。
初めて味わったその温かさに、私は涙した。








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