2011/12/15

写真の思い出




彼女はいつも私を見つけると名前を呼んでこちらに駆けてくる。
私はそれを当り前だと思っていた。



高校も三年目に入り、いよいよ勉強しか許されない状況に追い込まれた頃私は彼女に出会った。
今までも見たことがなかった訳じゃない。
でも気にかけることがなかった。
ただそれだけのこと。
気づけば私の前が彼女の席で、気づけば話すようになって、
学校に行けば毎日会えるし、彼女は私にきらきらと笑いかけてくれた。
そんな生活に可もなく不可もなくと私は自分勝手な思い込みを与えた。
幸せなどと思うには他に知らな過ぎて、今考えても幼い自分が醜い。
お互い学校以外で会うこともなければ、況して遊ぶこともない。
メールをしないこともないが、生活に触れるようなこともない内容で清々しい思いさえした。
何時だろうか、彼女が私と写真を撮りたいと言った。
あの日は卒業式だった。


そうして私達は卒業した。
彼女に毎日会えなくなった。
笑顔を見ることも、声を聞くこともなくなった。
連絡を取ろうと思えば取れたのに今まで一度もそうしていない。
それなのに、今こうして彼女と撮った最初で最後の写真を見て私は涙している。
怖かった。
連絡をして、彼女に会って、新しい生活に馴染んでいる姿を目にするのが。
あの時のあの時間が総て虚無になってしまうことが怖かった。




携帯のフォルダの中で微笑む彼女がこんなにも愛おしいなんてこと知りたくなかった。



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