2012/02/26

ぬるさ

僕らの関係は少しだけ湿った服みたいだった。
それに袖を通すと初めは嫌な感じなんだけど、そのうち自分の体温で温まって何も感じなくなる。
濡れているのは変わらないのに、感覚が奪われたみたいに何も感じることが出来なくなる。
それが僕らの関係だった。

「退屈だったんだ」

そんなこと知ってる。
今更言葉にして、音にするなんて一番滑稽だ。
やっと彼方を違和感なく受け入れられる様になったのに。
それを水の泡にしてしまう言葉。
僕を残していかないという僅かな希望は彼方の消失によって打ち砕かれた。
それなら僕にわからない様に、気づかない様に静寂以上に無音な終わりが良かった。

「ぼくだってそうだったのに」

退屈だったのに。
彼方だけが伝えることを許されるなんて。
ぬるくなったコーヒーはもう喉を通らない。
だからぬるくなった関係だってもう成立しない。

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