2012/02/19

きみが、ぼくだ


世界は常に輝いていて、曇りや闇など見当たらない。
そこに彼らはいた。
彼は海の中を縦横に飛び、彼女はそれを笑顔で見つめる。
普遍的な幸せの姿。
誰もが疑うことなく、永遠を望むような幸せ。
海と空の地平が溶け、正体が曖昧になる様子が心地よい。
手を取り合い、その身体に触れ、確かめなければ、自分が形あるものかさえ分からない。
降り注ぐ日の光に融かされる。
二人が繋がる。
一つのモノになる。
やはり正体が曖昧になる。
君が僕で、僕が君で。
空が君で、海が僕だから、空が海で、君が僕なんだ。
途端に視界が白くなる。
白に犯され、総てが消えていく。
そこには何もない。
"何も"さえない。
白に犯された世界。
そこには世界があった。
白の他に世界があった。
世界は何か?
世界は白で、君と僕。
全く社会など関係ない。
世界の白と、君と僕。
優しい彼が微笑んだから、彼女も思わず目を細めた。
総てが白だったから、何もわからなかったけど、確かに彼女は笑っていた。







朝。
気づけば二人はベットの上にいた。
お互いが裸で、シーツが乱れていたことにも気づいていた。
でも必死に分からないふりをする。
無知で純粋であるかの様に嘯いて、総てを無いことにしてしまえば誰も悲しむことはないと信じていたから。
自分の心が軋んだ音も聞こえないふりをした。
「おはよう、兄さん」
顔ばかり格好良くて、中身は子供の様に真っさらなお前だから俺は。
「おはよ、」
幸せの夢を心にしまいこむことにした。




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