2013/02/22

BTD考察






西暦30XX年

その頃の地上には人間の姿はなく、あるのは朽ち果てた廃墟かもしくは砂漠の大地だ。
以前までその場所に居た動物たちはある病原体の恐るべき流行によりそのほとんどが消滅し、生き残ったものたちも隠れるように地下に潜った。
そこにもう希望はない。
まっさらで空虚な世界だった。

しかし、地下に潜ることも許されず、幸か不幸か病原体の脅威から逃れた人間たちが僅かに居た。
彼らはひっそりと、確実に生きながらえ、血が濃くなることを恐れながら生きていた。

ある日、地下人間たちの中で地上を調査しに行こうという話になり、完全防備の様相で地上に出てきた。
そこに生命などあるはずがない、と誰もが思っていた。
けれど、そこには彼らが居た。
地上で生き延びた彼らが居た。

地下人間たちは驚き、奇異の目で彼らを眺め、いつしか調査研究という名目で彼らを実験台にし始めた。
その頃には彼らと地下人間の間で共有できる文化や言語もなく、免疫の落ちた彼らには殆ど地下人間に抵抗する力はなく、言われるがまま体を破壊された。
一人、また一人と彼らは仲間を失っていく。
隔離と言う名で押し込められた地上の廃墟の中で彼らは生きているのに死んでいった。
そうして、二人が残された。

彼ら二人は、他のものと同じように何度も何度も実験にかけられ、その体は見えない部分から蝕まれている。
もう、お互いがお互いを認識できない程に。
そして生きている実感もない程に。
今の敵は誰で、自分たちが何処に居て、誰を傷つけて、自分自身が誰なのか、分かる術がない。
ただ二人はお互いのことを殴りつけ、痛みで意識を確かにさせた。
二人以外には見えないけれど彼らの目の前には敵が居て、それが彼らの中で作り上げられた虚構だということに気がつきもしない。
黒い服を着た帽子の男。
そうしてその男を倒すことだけど考えてまた殴り合う。
それがまるで本当に居る敵を倒すかのように。

ふと、気がついた二人は互いに肩を貸して歩いていた。
ただひたすらに出口を目指して。
傷つけられた脳も、殴られた体も、内側から腐った内臓も全てが痛い。
それでも彼らは歩く。
いつも一緒に過ごした仲間たちを探して。
居なくなってしまった仲間たちを探して。
窓の向こう、消えてしまったものたちの最後の姿を見つめている。

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