2012/01/13




派手な外装の建物を出ると痛くなるような寒さに思わずため息が出た。
肺の中の空気をゆっくりと吐き出せば、それは白く濁った色になって大気を汚し、
すっかり暗くなった空を仰ぎながら、煩雑なホテル街から駅へ向かう間はどうしても無口になる。
沈黙が冬の空気をますます冷やす。
ふと寒さに感覚を失っていく指先に視線を移せば自らの薬指に光るモノの所為で胸がチリと痛んだ。
罪悪感からではない。
苦しいまでに膠着した今の関係が、総ての人を不幸にする自分の存在が痛くて仕方がないのだ。
考えることを止めた頭が思い出すことが出来たのは煙草の味で、
ポケットの中でくしゃくしゃになっていたそれを取り出して咥える。
そうして仕舞えなくなった左手を意味もなく曲げ伸ばししていると、
手首を伝って少しだけ温かい手が規則的に動いていた手をひしっと掴んだ。
普段二人が手を繋ぐことはない。
ホテル街を歩いているのに何を言っているのかと自分でも思う。
そんなくだらないことが可笑しくて、可笑しくて、
可笑し過ぎて涙が止まらない。




僕が君の手を握り返したのは、言葉にならなかったから
(何も言うことが出来ない僕をどうか許さないで)



お題:確かに恋だった



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