2012/01/10

精液程の感情



殴る。
頭、顔、胸、腹を殴る。
その総ての皮膚は裂け血が滲む。
痛い、痛いと訴える声が聞こえない訳ではない。
止めどなく流れる涙が見えない訳でもない。
そんなことは問題ではない。
こうして殴られ、訴えも聞き入れられないにも関わらず、それでもなお俺に愛情を向けるこいつが憎い。
そうやって俺の心に漬け込もうとする。
こいつしかいないのだと錯覚させようとする。
だから殴る。
頭、顔、胸、腹。
「ちょっと、何やってるの」
止めに入った友の顔は青ざめ、転がる人間は泣きながら言う。
「愛してる」
その顔に唾を吐きかければ怒れる友の拳が飛んできた。
込み上げた笑いが止まらない。



護身としての発狂。
誰にもまともだなんて言わせない。





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