2012/09/15

岩井俊二、本当にずるい


今日は、シネマライズで『スワロウテイル』を観てきました。



本当に、岩井俊二、ずるい

「何がどう」とか「誰がどう」とかそういうことは言えない。
共有したくないくらいの感想は私だけのもの。
それと、この映画を観たことだけが残ればそれでいいと思った。
私とあの子の記憶の中で特別な日になればいい。
それだけで嬉しい。





2012/09/14

双子のはなし



僕は場所があれば何処でもしますよ。各地を点々としているのも楽しいですし、一所でだらだらと生活に似たものを送るのも嫌いじゃあありません。此処へ来たのも何となくで、いつ迄居るかなんて分かりません。たまに、追い出されてしまうこともあります。僕のやっていることが少し奇異だから。魔女と言われたこともありました。何でこんなことを続けるか。ゴウでしょうか。ああ、業です。こうしていることが普通であり、他のことが出来ないとも言いますけど。可笑しいですか?

じゃあ、いつも僕に話を聴きに来るあなたに、今日は僕からとっておきの話をしましょう。嘘だというならそれ迄。僕の子供の頃の話です。





僕は、双子でした。そうして、兄と僕は物心ついた頃には見世物小屋でこうして芸を披露して居ました。そうすること以外何も知らなかったので不思議に思うこともありません。ただ、生きることに懸命でした。


兄と僕はある人に育てられていましたが、彼が僕達にとって本当はどんな存在なのかは分かりません。父親かもしれないし、兄かもしれない。尋ねようとしなかったけれど、僕らは彼が愛する対象なのだということだけは知っていました。だから、それだけで良かったのかもしれません。


彼は兄と僕を「アル」と呼びました。そうです、二人とも「アル」でした。客に見せる芸も二人の違いがなければない程奇妙に感じるものでしたから、その呼び方に困ったことはありません。たまに、彼が僕らを呼ぶ時は不便ではないのかということを聞いて来る人がいますが、その答えは「いいえ」です。彼はいつも兄だけを見ていました。だから、彼が「アル」と呼ぶ時、それは兄のことであり、僕はただの付属物に過ぎない。それが僕の幼い頃の日常です。


彼は勿論兄を可愛がりました。やっていることは同じなのに、褒められるのは兄だけ。その笑顔を向けられるのも、抱きしめられるのも、総て僕ではありません。そうして、毎晩彼の部屋に呼ばれるのも兄でした。


僕は彼の部屋に入ったことがありません。覗いただけで背中を打たれ、痕が残ります。多分、僕は彼に必要とされたことがなかったのです。彼が待つ部屋に兄が入っていくと、いつもその部屋の前には香の薫りが漂ってきます。それは脳味噌まで溶かされてしまいそうな、そんな毒々しい薫りでした。それを胸いっぱいに吸い込んだらきっと窒息してしまうに違いありません。きっとずぶずぶと溺れてしまいます。それでも兄はその中に入って行きました。

暫くすると引っ切り無しに聞こえてくる音はきっと兄の声だったのでしょう。それは甘く、時に刺々しく僕の耳に突き刺さり、僕の身体もずくりと重くさせます。嗜めるようなそれでいて優しい彼の声は、どんなに求めても僕には与えられることのないものでした。正直に言います。僕は兄が羨ましかった。彼に愛される兄がいっそ殺してしまいたい程羨ましかったんです。


そうしてある日、兄は見せつける様に彼に与えられたネックレスを身につけて部屋から出てきました。きらきらと光るそれが僕をどれだけ苦しめたか、想像に難くないでしょう。いつも兄は僕に何も言いません。ただ優越を含んだ微笑みを浮かべて僕を見詰めるだけです。その頃から彼が居ては僕は一生劣等感から抜け出せないのだと思うようになりました。


それは、空が真っ暗な夜でした。夜中にふと起きてみると、隣に居る筈の兄が居ません。不思議に思って小屋の中にある粗末な作りの舞台まで行ってみると、そこには箱の中に体を曲げ入れる芸に取り組む兄が居ました。その瞬間、兄は彼に褒められる為、部屋に呼ばれる為に練習をしているのかという考えが僕の頭に巡り、その浅ましさに兄を軽蔑しました。もはや羨ましさなどはなく、兄の様になるのだけは嫌だという思いに駆られました。「ああ、嫌だ」と引き返そうとすると、ばたんと兄が居る箱の蓋が下り、鍵の部分が落ちた状態になって、内側からでは箱が開かないようにないっているのです。このままではいけないと箱に駆け寄ると中で呻く兄も僕に気がついたらしく、「はやく開けろ!愚図!」という声が聞こえます。そうです、僕は愚図でした。上手くすれば兄も僕も同時に彼に可愛がってもらえた筈なのに、そうならなかったのは僕が愚図だから。そして今、箱に鍵をかけて小屋に火をつけたのも僕が愚図だからです。本当に僕はどうしようもない人間でした。


暫くそうして僕が小屋の中で燃え盛る火を見詰めていると、そこに彼が飛び込んで来ました。僕を一瞥した彼は箱の中にいるのか兄だと確信し、羽織って居たコートで必死に火を消そうとしています。自分が中にいたら彼はどうしただろうと考えると笑いがこみ上げます。大声で笑う僕の声が響いていました。


火は消されました。想像よりも小屋自体は燃えることはなく、兄の入った箱だけが焦げ爛れて真っ黒です。そんなもの開かなければいいものを、彼はゆっくりと箱に手をのばしました。それ程までに彼が兄を慕う気持ちは僕にはわかりません。生きてもいないものはもはやただの物です。肉の焦げた臭い、それは牛や豚とは違う、確かに人間の焼けた臭いが部屋に広がりました。臭くて臭くて仕方がないのに、彼はその物体を抱くと獣の様に泣いていました。


僕は、ただ愛されたかっただけなのに。兄が居なくなれば僕が「アル」として愛される筈だったのに、総ては可笑しくなってしまった。再び燃やされた見世物小屋の中には兄だった物と彼だけが居ました。最後の最後まで僕は拒絶され、一緒に灰になることも許されなかった。小屋があった空き地に燃える火を僕は憎みました。苦しみだけを置き去りにしたあの火を只管に。





というのが僕の子供の頃の話です。あまり人には言わないんですけど、言うと大体笑われるか、馬鹿にするなと罵られます。若しくは「火が嫌いだ」と言ったじゃないかと、火を飲む芸を見せる僕を非難する人も居ます。そんなことを言われてもどうすることも出来ないのに、皆ちゃんと信じてくれてるんですね。


この話が真実なのか?さあ、どうでしょう。本当、かもしれませんよ。





2012/09/07

手首の夢




あの頃、私は天使だった。
何もなくただ広がる野の上で只管人間を探し、罰を与え、殺していた。純粋な正義心、この世の浄化が私の仕事。人間を狩ることに何の喜びも感じなければ、悲しさも感じない。けれど空しい。どれだけ殺しても報われない。世界はますます血で汚れていく。私はこんなにも精魂果たして仕事をしているというのに、人間たちは一向に変わらない。同じ人間であった私も自分自身を恥ず程に。


天使はもともと人間だ。子供は天使と人間の間の存在である。それが分かれるのは大体物心ついた頃。「明らかに自らは天使である」という思いに駆られ、次第に羽が生えてくる。白く、まだ小ぶりな羽でも、天使と人を分かつには十分だ。人間に対する圧倒的優位。人間に対する存在否定も容易に行われる。何故なら私は天使だから。それ以外に理由など要らなかった。


そうして、正義の鎌を振るうようになってからも私は迷いに苦しむことはなかった。両親は卑しくも人間だったので、すぐに殺すことを決めた。けれど、それは簡単なことではない。鞭で打ち、両手足を切り落としてから殺す。彼らはのたうち回ったが、自分たちの子供が天使なのだから仕方がない。最期は水に沈めた。手足がないからずぶずぶと落ちていく彼らを見て少しだけ泣いた。「天使でよかった」と彼らに感謝した。両親が受けるような仕打ちを受けないのも、私が天使であるからだ。それが嬉しくて少しだけ泣いた。


それから私は野に出でた。狩っても狩っても減らない人間を懸命に殺す。拷問には時間がかかるので、日に五人と殺せないが仕方ない。けれどその不甲斐なさには死にたくなった。


そんなある日、私は人間を二人捕まえた。私と同じくらいの年の少女たち。彼女らは私が何を言っても、何度鞭で打ってもその手は離さなかった。そのうちに一方が死んだ。それでも手は繋がったまま。生き残った方はと言えば、命乞いをすることもなく、切られた相手の手首を握っている。そんとき私は気がついた。彼女は天使になることが出来た人間だと。


「なんで天使にならなかったの?」

私には分からない。そこまで人間に拘る理由。

「なんとなく」

彼女が短く答えた。理由になっていない。

「人間なんて何が良い?無知で汚くて悪でしかない」
「そんなことないよ」


そう言って手首を撫でる彼女を見てはっとする。もしかしたら、私は何も言えない。ただ、頭の中には様々なことがめぐっている。彼女が正義と引き換えにした愚かさと何か。私の知らない何か。これまでもそしてこれからも、触れることはないそれは私の長い一生で求めても手に入れることが出来ないものがあるのだと感じさせた。暫くして、彼女も死んだ。だから私は何かについて考えるのを止めた。

2012/08/23

紙とペンの

今、こうしてペンを握ってあなたを待っています。ここに書かれているものだけがあなただから。それだけだから。以前の姿ではもう会えないのです。結構気に入っていたのに。これもまた生まれ変わりと言うのでしょうか。あなたとは、何なのでしょうか。体があって、意識があって、動き出すものがそれなのでしょうか。そうだとしたら、ここに居るあなたは誰なのでしょう。

今、私はあなたを感じています。あなたはここに居ます。それ。誰も否定することは出来ない。確かにここに居ました。だから大丈夫。もう平気です。また会いに来ます。紙とペンを用意してあなたを待っています。

2012/08/12

痣が、そう思った。
青、赤、紫、黄、茶、そのどれも目を惹くには充分で、ただその楽しみ方を考えあぐねていた。

ひとつは自らにそれを求めること。
ふたつめは誰かのそれを求めること。
みっつめはその写しを求めること。
よっつめはそれを与えること。
いつつめはそれを嬲ること。
むっつめはそれを嬲られること。

痣が、と夢にまで思うのに、自分がどれを選べば良いかわからない。今わかるのは視界に捉えただけで、自分を抑えることが出来なくなる程にそれを愛好しているということだけ。

ある人は転んだ証しとして、ある人はぶつけた証として、ある人は虐げられた証として、ある人は自戒として、何度も痛みを経験する。痛みを記憶し、触れることで再生する。そうして消えるその瞬間まで、じくじくと残る痣を、あれ程までに美しいものを、何故人は疎ましく思うのだろう。
そんなことをしても、和らぐ筈は無いのに。

美しく彩り、痛みを再生する。
痣が、こんなにも愛おしい。

帰省、その読み方

何時の間にか帰省していた私は、毎日同じ場所に通いながら生きています。この田舎で学校以外に唯一若者の集まるその場所は、自分自身が責任ある人間なのだと実感させてくれます。それがどうしようもなく辛くって、それと同じだけ本を読むことにしました。本当は映画も観たいのだけれど、観たい映画は見つからない。図書館がとても居心地良いです。

こっちに来て少しして、バイト先から連絡があったのだけれど電話口の人が「きしょう、きしょう」って言うからなんだろうって。きしょう、きしょう、きしょう。別にいいかなって其の侭にして父親の作るご飯を食べました。

僕は今日も元気です。

2012/07/04

Zoo & Aquarium


子供のころよく行った市営の遊園地と動物園






動物園の中で一番好きな場所は「水族館」と呼ばれる場所でした






剥製と卵の殻と熱帯魚と小さい鰐しかいない「水族館」



近くにあるいわゆる観光地の寂れたおもちゃ屋さん
それでも子供はまだいた