2012/01/10

貴方が優しいのが悪いんです。
その幸福が僕を鈍らせた。
それが気持ち悪くて、居た堪れなくて、最後は生きていることすら辛くて仕方がなかった。
そう、貴方が優しくするから。

大切な人傍にいなくなった不安を埋めるのは誰でも良かったのでしょう?
安心できる筈も無いのに貴方は馬鹿みたいに簡単に僕を手中に収めた。
僕が何もかも理解しているとは知らずに。
誰かの代わりであり続けているうちは良かった。
触れて伝わる熱もたまに言う戯言も総て冗談で済ませられるうちは正気でいられた。
なのに時間は怖いもので。
貴方はだんだんあの人の影を僕に重ねなくなり、只管僕を抱くようになった。
その頃から僕の感覚は少しずつ鈍り、息をしているのかどうかさえ意識しなければいけない程で。
代償は僕にとって変え難い苦しみだった。
毎夜優しく抱かれるその腕の中で、上にいた貴方に声をかけたのはただの気紛れだったのだと思う。

「貴方はあの人に捨てられたんです。」

普段表情一つ変えることのない貴方の顔が歪み、冷たい平手打ちが飛んできた時は僕の正気が蘇った瞬間とイコールとなった。

あゝ、またこれで気が狂いそうにまともな日常が始まる。

幸福の代償。
それは人を鈍らせる。

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2012/01/02




僕が存在することが貴方の生きる意味であればいとただ必死に想ったのに、結局伝える前に貴方は居なくなった。後悔ではない。無力な自分への純粋な辟易である。

2011/12/25

Merry Christmas.


私は自分が人に求めすぎていることを知っている。
モノではない。
お金でもない。
ただ気持ちが欲しい。
極端な感情しか愛せない私は中庸で半端な愛情はいらない。
「愛している」
「必要だ」
そう言われないと不安で仕方がない。
そしてその不安の穴はぽっかりと空いたまま今日もまた誰かを傷つけた。
あなたに愛されたいとはっきり言うことが怖いように、
あなたもわたしを愛しているということを恐れている。
強いて言ってもらった言葉の虚しさ。
馬鹿らしいことを知っているのに何度も繰り返して傷を増やす。
どうしてこんなに器用にできないのか。
どうして想いやれないのか。
このまま想いの通じぬまま死んでしまう予感に涙が止まらない。







私が私のわがままを言うだけの関係は嫌だ。
早く帰ってきて欲しいだの、早く会いたいだのの言葉がなければ必要とされてないとしかかんがえられない。
私の性格は1か0なんだよ。
好きか嫌いか。
必要か必要じゃないか。
それだけなんだよ。
何も言わないことは嫌いと同じなの。
苦手なんて知らない。
何も言えないようにしか思えない。
そういう消極的な姿が嫌い。




2011/12/21

強引に



強引に押し付けた薄い皮膚はエナメル質の白く並んだもので傷つけられて、そこは裂けて、赤く不味いものが流れ出た。

じくじくとそこが痛む。

加害者は今さっき部屋を出ていった。

普通ならその腕を取るなり、後を追うなり、背中を見詰めるなりなんでも出来た筈だ。

けれど僕は口に広がった鉄の味をじっくり確かめることしか出来なかった。

羞恥と嫌悪と後悔を隠すにはそれが一番似合う方法だった。




2011/12/15

写真の思い出




彼女はいつも私を見つけると名前を呼んでこちらに駆けてくる。
私はそれを当り前だと思っていた。



高校も三年目に入り、いよいよ勉強しか許されない状況に追い込まれた頃私は彼女に出会った。
今までも見たことがなかった訳じゃない。
でも気にかけることがなかった。
ただそれだけのこと。
気づけば私の前が彼女の席で、気づけば話すようになって、
学校に行けば毎日会えるし、彼女は私にきらきらと笑いかけてくれた。
そんな生活に可もなく不可もなくと私は自分勝手な思い込みを与えた。
幸せなどと思うには他に知らな過ぎて、今考えても幼い自分が醜い。
お互い学校以外で会うこともなければ、況して遊ぶこともない。
メールをしないこともないが、生活に触れるようなこともない内容で清々しい思いさえした。
何時だろうか、彼女が私と写真を撮りたいと言った。
あの日は卒業式だった。


そうして私達は卒業した。
彼女に毎日会えなくなった。
笑顔を見ることも、声を聞くこともなくなった。
連絡を取ろうと思えば取れたのに今まで一度もそうしていない。
それなのに、今こうして彼女と撮った最初で最後の写真を見て私は涙している。
怖かった。
連絡をして、彼女に会って、新しい生活に馴染んでいる姿を目にするのが。
あの時のあの時間が総て虚無になってしまうことが怖かった。




携帯のフォルダの中で微笑む彼女がこんなにも愛おしいなんてこと知りたくなかった。



2011/11/17

GUNMA



東京に来て一年半と一寸、思い出すことはないと思っていた出生地のことが頭を掠めること数回。
とはいえ思い出せるような思い出も、場所も人間も皆無だからただあの地の重い空気を想起する。
本当に何もない場所だった。



一面広がる真っ暗な水田の画像を切り取った夜20時の電車の車窓。
帰宅時間を過ぎたこの乗り物にはほとんど人がいない。
いても私と同じように何かしらの試験の為にこの時間まで家に帰らなかった人間と、
これからきっと友人の家に出かけるであろう人間のみ。
私は無意識にヘッドホンから流れる音楽を聴きながら自分以外を一人一人なぞってみている。

優先席に座っているカップル。
日系ブラジル人のカップル。
私の理解しえない言語でイチャついていた。
何の前触れもなく女が急に怒り出したと思えば男は興味がなさそうに携帯を操作する。
そんな一コマ。

真っ黒な制服に包まれる少女。
ブラウスのボタンを上まで締めて必死に単語帳を見詰める彼女。
何故だか可哀想だという気になる。
そんな一コマ。

数人でPSPに興じる男児高校生。
どうやらまだ3次元に興味がなさそうな男子生徒。
眼前に座る女子高生がミニスカートにも関わらず脚を開いていても気にならない様子。
いたって不健全。
そんな一コマ。

品のない下着を見せる女子高生。
友達と会話していてもその存在を無視する女子高生。
隣の温かい感覚よりも、携帯内の冷たい誰かの方が大切らしい。
そんな一コマ。

決まった駅から電車に乗ってバラバラな駅で降りていく障害者たち。
近くのセンターで学習や軽労働をする障害者たち。
最早彼らを誰も気にとめない。
煩ければプレイヤーの音量を上げればよいし、盛り上がってもいない会話の音量を上げればよい。
此処では彼らを気にした方が負けなのだ。
そんな一コマ。

そして私。
ジロジロと人々を凝視し、自分だけ他とは別と気取っている私。
何も変わらない。
他と何も変わらない。
この地のこの電車内の鬱々とした雰囲気から脱け出さない。
所詮この地の人間。
面白いことはない。
つらいこともない。
いつも出会うべき人間に出会い、別れるべき人間と別れいずれ自分も無くなると思考する。
そんな一コマ。





何が嫌でそこを出たのかは分からない。
只出ていきたかった。
その一心だった。
そうしてたどり着いた東京でふと思い出す故郷はいつも酷く哀しい。